2017年 04月 20日 ( 1 )

The Sea Is...  by SERENITY IN MURDER

聴いていて「なるほどな、うんうん。やはりふぁじーの好きなデスメタルというものはこういうものなのだな」と深い納得を覚え、改めて自身におけるメタルミュージックに対する重要項目とか重要課題とか、つまりはマイメタルアイデンティティとかマイメタルアティチュードみたいなものを再認識することが出来たので、感謝の意を込めてレビューを送ろう。

SERENITY IN MURDER:The Eclipse
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国産メロディアス/デス/ブラック/エクストリームメタル筆頭候補という地位を早くも固めた感があるバンド、最新作。

なるほど噂に違わぬ高品質なエクストリームメタルである。洗練されまくったサウンドプロダクション、演奏技術や作曲能力の高さ。世界レヴェルの最前線で渡り合える一級品と述べても差し支えも文句もあるまい。

だがふぁじーは、ここまで高められた作品に対しても不完全な満足感を覚えざるを得なかった。

過去作は聴いたことがないし調べてもいないが、今作においては聴けばわかるとおりキーボードによる色鮮やかなオーケストレイションが全編に渡って大胆に、時には繊細に奏でられる。

本作におけるキーボードというものは単に音数を増やしてアグレッションを強化したりするだけではなく、多分にドラマティシズム(レビューブログやって10年経ってるけどこんな言葉初めて多分使ったな)を強く演出するために使用されていることと思う。

だがその用意された『ドラマティシズム』が、今一つふぁじーには響いてこない。というよりそもそも、『心』にまで中々辿り着いてこない。辿り着く前に、カタルシスを得る前に曲が終わってしまう。

本作に収録された全十二曲のほとんどが三分台。四分台の曲でもインスト二つを除けば二曲しかなく、#3"Isle Of The Dead"に至っては三分を切るほど。この作品がキーボード一切未使用のメロディック・デスラッシュならまだ話が違ったかもしれないが、リスナーに『ドラマティシズム』を感じさせるにはランニングタイムに問題があると言わざるを得ない。

その点は、例えば同じくメロディアスでシンフォニックなメロディックデスメタルとして個人的名盤セレクションに名を連ねるSKYFIREの"Esoteric"ならば完璧と言えるまで計算されたプログレッシヴな曲構成…わざと悪い言い方をすれば長ったらしく倍近い演奏時間が取られた曲でリスナーのカタルシスを刺激し、最後に爆発させてくれる。その長ったらしい演奏時間にちゃんと意味がある。プログレッシヴである。キーボードの使用とものすごく相性が良い。

また例えば似たようなサウンドを扱うKALMAHだったら、どれだけ目立つキーボードで飾り付けたところで屋台骨が極太ゴリマッチョなブルータルメタルなので、多少曲が短くとも、曲の背景がいくら繊細でドラマチックであろうともそこまで関係無い。『ドラマティシズム』に聴き入る間もなくままならないまま、太刀打ち出来ない程の圧倒的なパワーで捻じ伏せられてしまうからだ。

聴き手を深く納得させるには説得力が足りず、有無を言わせず撃沈させるにはパワーが足りず。十二曲で四十分というトータル収録時間に垣間見えてしまった、ともすれば八方美人とも捉えられかねないバンドの本質が、ふぁじーがもどかしさを覚える原因なのかもしれない。

ところで

「ふぁじーの好きなデスメタルというものはこういうもの」という冒頭の言葉はこのバンドに対するものではないことを、誠実な読者の皆さんはおわかりいただけたかな?
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by final-resistance | 2017-04-20 22:36 | Comments(6)